この事例の依頼主
男性
観光業に従事しておりますが、会社の景気が悪くなり、ボーナスがなくなったばかりではなく、給与まで減額となり、しかも、ちょうど、子供の進学が重なったため、生活費の補填及び教育ローンで借金が膨れ上がってしまいました。思い切って転職も考えてはみたのですが、さすがに、いつまでも、このような不景気が続きわけではなく、いつかは元に戻るだろうという期待もあったので、辞めるのではなく、残業がなくなった分、アルバイトをすることにしました。清掃のアルバイトです。しかしながら、清掃とはいうものの、かなり体がしんどいもので、特に、中途半端にかがんでの作業が多いため、腰を痛めてしまいました。そこで、清掃のアルバイトは辞めることにして、次に、夜専門のタクシーに乗ることにしました。タクシーは、長距離が運よく、一発当たると、結構、稼げるので、なんとか借金の返済と生活費のために頑張りましたが、これまたずっと座りっぱなしもよくないようで、またしても腰を痛めてしまいました。しかも、医者からは、もうアルバイトで無理するのは辞めた方がいいと言われてしまい、「でも、借金返さないとヤバいんです。」というと、「でもね。体を壊して昼間のお仕事もできなくなったら、もっとヤバいでしょ?」「医者の私が言うことじゃないかもしれないけど、借金のことは弁護士にでも相談したら?」という事で、そこから、借金問題を誰かに相談するという頭になりました。ただし、調べてみたところ、どこも、弁護士の事務所は東京の大都会ばかりで、近所にも弁護士の事務所はあるにはあるけど、名前しか載っておらず、どういう感じなのかもわからないので、いずれも躊躇してしまいました。ただ、地元の司法書士で、明かる感じの事務所の写真も掲載しているし、なんか親しみやすそうな感じが持てたので、そちらに相談してみることにしました。そして、頑張ってきたんだけど、ちょっと借金の返済が行き詰まってきたこと、子供の学校の関係があるので、なんとか家は今のままで維持したいこと、そして、妻や子供に迷惑がかからないようにしたいこと、などをお願いしたところ、「民事再生という手続きもあるけど、手続きが大変ですよ。」「自己破産ですっきりした方がいいと思うけどなあ。」「家を手放しても、また近くでどこかに借りた方がいいんじゃないかな。」と自己破産ばかりを勧めてくるので、「そうは言っても簡単に近所に賃貸できる家が見つかるか分からないし。」「個人再生が大変ってどう大変なのか教えてください。」「できるだけ頑張りますんで。」と言いましたところ、「正直、うちの事務所で個人再生をやりたい人ってあまりいないから、実際、やったことはないんですよねえ。」と言い出しました。ですので、「やったことないのに、大変とか、大変じゃないとか分かるんですか!?」「ぎりぎりまでなんとか考えてもらえませんか?」と言いましたが、明らかにやりたくなさそうなので、もう、その司法書士に相談するのは無駄だと思ってやめました。そして、改めて、弁護士事務所を探したところ、近所とは言えないけれども、よく見ると新潟にも事務所があるということなので、そこで再度、相談してみることにしました。なお、複数社から借入があるのですが、そのうち1社だけが借入額が多い状況でした。
早速に、「個人再生っていうのは、大変ですか?」と尋ねると、弁護士先生曰く、「大変です。」「大変ですが、大変だから通常は弁護士や司法書士に依頼するので、それを気にする必要はあまりないです。」「他の裁判だって大変ですが、大変だからやらないっていうことはないですからね。」「個人再生は、自己破産と比べると責任が重いというか、再生が通らなければ、例えば、家が維持できないとか、明確な結果が出るので、そういう意味で嫌がる司法書士とか弁護士はいるんでしょうね。」ということでした。なるほど、たしかに、自己破産であれば、もともと、家がとられてしまうことも覚悟の上だから、何とか家を守らなければいけないという責任感も何もないというわけですか。「もちろん、自己破産の場合でも、『免責不許可事由』と言って、例えば、ギャンブルとか浪費とか投機行為とかで、本来は、自己破産が認められないかもしれないものについて『免責』を認めてもらうために、いろいろな準備をしなければならない、という大変さがある場合もありますよ。」「ただ、今回のケースの場合には、そういうことではないですもんね。」「今は、観光業は苦難の時代ですからね。」「同様に困っている人はたくさんいますよ。」「それで、個人再生の件ですが、ざっと計算すると、返済額は3年間での返済の場合には、毎月○○円ぐらいになりそうですが、大丈夫ですか?」と示された数字が私が予想していた金額よりもはるかに低かったので、「えっ?こんなに少なくていいんですか?」「これなら、正直、バイトしなくても全然、払えます。」とお答えしました。「ただ、債権者の顔ぶれを見ますと、ちょっと気になる点があるんですよ。」と言うので、私が身構えたところ、こういう話でした。個人再生をする場合には、原則として、債権者の決議に回されるそうです。そこで、債権者の中で、過半数の債権(債務)の額の債権者が個人再生に反対するとその個人再生はそこで手続きがストップして進められなくなるとのことでした。ちなみに、私の債権者と言うのは、A社 500万B社 100万C社 50万D社 30万E社 20万(ただし、B社~E社は全部保証会社が同じF社)という感じで、A社がダントツ債務が多いのです。ですので、もし、A社が個人再生に反対をする場合には、そこで個人再生はおジャンになるということです。「普通、反対するもんですか?」「普通はそんなに積極的に反対することはありません。」「ですが、この会社(A社)は結構、異議を出します。」「特に、自分の会社が異議を出して個人再生を左右できる状況にあるときに限って、異議を出してくること多い気がします。」そこで私はお願いをしました。「先生、では、事前に、A社に個人再生に協力してくれるかどうか聞いてみてもらえませんか?」「もし、それでダメだというのであれば、自分も破産の覚悟をしなければいけないし、妻にもそのことを伝えなければなりませんので。」とお願いしてみたところ、「多分、事前に聞いても、『その時になってみないとなんとも言えません』と回答してくると思いますよ。」と言われてしまいましたが、とにかく、一度、聞いてほしい、とお願いしましたところ、なんと、こういう返事だったという事です。「個人再生?そんな手続きにご協力する気はありません。当社としては異議を出させていただきます。」
そういうことで、さすがに、この回答には驚きましたが、実は、このような意地悪をされても、結局、この方は、破産する必要はありませんでした。個人再生の認可を得て、きちんと家に住み続けております。どういうことかと言いますと、この方は、個人再生のうち、『給与所得者等再生』という手続きを使ったからです。通常、個人再生を行う場合には、「小規模個人再生」という手続きを選択します。給与所得者等再生はあまり利用者数が多くありません。それはなぜかと言いますと、個人再生の場合、返済額は、その借金の総額に応じて大幅に借金の免除が認められますが、給与所得者等再生の場合には、【可処分所得の2年分以上】であり、しかも、小規模個人再生の場合よりも高い返済額でないといけないと決められているからです。分かりますでしょうか?給与所得者等再生の返済額 ≧ 小規模個人再生の返済額という風に決められているのです。そうであれば、わざわざ、返済額が高くなる可能性のある給与所得者等再生をあえて選ぶ動機ってあまりないはずですよね?ところが、今回のケースでは給与所得者等再生を行いました。それは、なぜかと言いますと、債権者からの異議が出されることが明らかだったからです。小規模個人再生の再生計画が認可されるためには、債権者の頭数の半数以上または債権総額の過半数を有する債権者が異議が出されないことが必要です。今回のケースでは、結局、A社 500万円F社 200万円というこの2社のみなのです。もし、B社 100万C社 50万D社 30万E社 20万が保証会社が同じという事ではなくバラバラであれば、ひょっとしたら、A社は反対してきても、B社~E社が反対しなければ、債務の過半数の債権者が異議を出したとしても債権者の頭数としては、半数以上から異議が出ない、という事で、決議が通る可能性はありましたので、そのまま小規模個人再生にチャレンジするという事もあり得ました。しかし、今回は、たとえ、F社が異議を述べなかったとしても、結局、A社が反対してしまえば、「頭数の半数以上」にはならず、「債権総額の過半数を有する債権者」であるA社が反対していることをもって個人再生はつぶされてしまうと言ことになるのです。小規模個人再生は失敗です。なお、言っておきますと、そんなにどこの業者も意地悪ではありません。個人再生で異議を述べてくるというのは全体から見れば、一部の業者です。ですが、異議を出すという方針を何がしたいのだか頑なに続ける業者がいることも事実です。そこで、そういう異議を出す業者が債権者の中に混じっており、しかも、その業者が債権額の半額以上を持っている場合には、小規模個人再生ではなく、給与所得者等再生を選択する必要が出てくるのです。すでに述べた通り、給与所得者等再生を選択した場合には、可処分所得の2年分以上という要件がかぶさってくるので、通常であれば、小規模個人再生を選択した場合よりも、返済額が高くなるのですが、必ずしも、高くなるとは言えません。「可処分所得」というのは、年間の収入から、住居費や必要生活費を控除した残りの金額(『所得』のうち『処分』が『可』能な金額)であるので、必要な生活費が高額な場合(例 不要な必要が子供がたくさんいる)には、可処分所得が多くありません。今回も、可処分所得が、多くなかったので、給与所得者等再生が利用できました。